#36 Anchor Steam Beer

Anchor Steam Beer

  Bitterness : 35 IBU
  Alcohol by Volume : 4.9%
  Original Gravity : 12P
  Malts : Blend of  2-row Pale & Caramel
  Hops :Northern Brewer

Deep amber color. Distinctive flavor. Rich history.

アンバー系の色で、泡立ち・泡もちともに良好な、アメリカを代表するクラフトビールです。ホップの良いアロマ、モルトの味わいが大変しっかりしており、円やかな口当たりが特徴。喉越しはドライでありながら、じんわりと苦味が口の中に残る心地よさがあります。そしてこの「スチームビール」の最も大きな特徴は、ラガー酵母を用いているにもかかわらず、エール酵母のように高温で発酵させて造るハイブリッド・ビールであること。

ラベルには

スチームビールとは、低温(5〜9℃)で発酵させなければいけないラガー酵母を、エール酵母のように高温(15〜25℃)で発酵させた事により誕生しました。ラガー特有のコクと香り(麦香)がありながらも、エールのような華やかな香りも兼ね添えたこの造り方は、口コミでサンフランシスコで評判となり、ついにはアメリカ全土で有名になりました。

と表示されていますが、ラガーとエールのいいとこ取りをしていると自ら言っているように、とても味わい深いビールだといえます。

 

「世界ビール大百科」によると、 サンフランシスコのアンカー・ブルーイング会社は、1960年代に倒産の危機に見舞われましたが、メイタグ洗濯機会社を営む一族の長男、フリッツ・メイタグにより救われました。彼は1965年に、中古車を買うに等しい金額で醸造所の経営権を取得すると、伝統的なビールの造り方を学びつつ醸造所を立て直し、この "Anchor Steam Beer" を現代に甦らせたのでした。若きアントレプレナーとしてのメイタグが目指したものは、マイクロ・ブルワリーであり、それは当時のアメリカにはまだ登場していないものでした。そしてこの事は今日のアメリカにおけるクラフトビール運動の原点であり、優れたクラフトビールが存在する理由でもあるのです。

 

ちなみに、“スチームビール”という呼称の起源は、樽中で大量に発生した炭酸ガスが、開栓時に、蒸気の噴出すような音を立てるからだそうです。それとスチームビールが造られた頃の醸造所の動力に、蒸気機関が使われた事も由来しているとか。

 

いまでは醸造所の規模も大きくなり、マイクロ・ブルワリーとはいえませんが、メイタグが目指したビール造りの精神は今も受け継がれ、次々に優れた製品を世に送り出しているアンカー社。これからも変わらず優れたアメリカン・クラフトビールを造り続けてくれることでしょう。期待しています。

 

【出典・参考】

「世界ビール大百科」F.エクハード/C.P.ローズ他 田村 功 訳 大修館書店

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