▼About Beer (from THE BEER BOOK by Tim Hampson)


ビールとワイン

ビールは同じアルコール飲料として、ワインと同列に扱われていいはずです。しかし、ワインがしばしば文化的な飲み物として取り上げられるのに対して、ビールはそうでもありません。ワイン界のエキスパートは、使用されているブドウの種類や、様々なバリエーションをもたらす色、香り、味の微妙な違いについて整然と語ることができます。これと同じことが、ビールについてもできるのではないでしょうか。


 ワインはブドウをつぶし、甘い液体を取り出し、これを発酵させて造ります。ビールの製造も基本的には似ていますが、するべき作業はもっと複雑だといってもいいでしょう。ビールを造るには、ブドウ果汁からではなく穀物から発酵可能な糖分を抽出しなければなりません。また、糖分をアルコールへと変換する酵母の力を引き出す必要もあります。さらにホップを加え、香りと味にふくらみを持たせ、品質が劣化しないようにします。使用する水の質についても、吟味しなければなりません。このようにビール醸造には、高度な技術と芸術性が必要とされるのです。

 こうして、あらゆる色と味を備えた100種類以上のビールスタイルが生まれ、私たちはその中から好みに応じてチヨイスすることができます。穀物、酵母、ホップ、そして水というそれぞれは単純な材料から、グラスに注がれたときの多様な色、香り、味のハーモニーが作り出されるのです。

 ビールを飲む前には視覚で外観を楽しみ、嗅覚で香りを楽しみます。微妙な色の違いや複雑な香りを楽しむのも、ビール飲みの喜びの一つです。それから一口含んで味を楽しみ、飲み込んだときの後味も楽しみます。そして、心の中で醸造家の技の素晴らしさに拍手喝采するでしょう。高価なワインに匹敵するようなバラエティと複雑さを楽しませてくれる彼らは、ビール飲みにとってのヒーローなのです。